パタゴニアのフリースといえば、かつては袖口に輝く「POLARTEC(ポーラテック)」の刺繍が信頼の証でした。しかし、最近のラインナップを見ると、そのロゴを見かける機会がめっきりと減っています。「パタゴニアはポーラテックをやめたの?」「あの名作R2はどうなった?」と、戸惑いを感じているファンも多いのではないでしょうか。
長年、フリース界の最強タッグとして君臨してきた両社に、一体何が起きたのか。今回は、パタゴニアが素材選びの舵を切った背景や、ポーラテックに代わる自社開発素材の実力、そして私たちが今選ぶべきモデルについて、深掘りして解説していきます。
登山者やキャンパーを驚かせた「脱ポーラテック」の流れ
アウトドアウェアの歴史を語る上で、パタゴニアとポーラテック(旧モルデンミルズ社)の関係は欠かせません。1980年代、両社が共同開発した「シンチラ」は、重くて乾きにくいウールに代わる魔法の素材として世界を席巻しました。
それ以来、テクニカルフリースの代名詞である「Rシリーズ(レギュレーター・フリース)」には、常にポーラテックの高機能素材が採用されてきました。格子状の裏地が特徴的な「パワー・グリッド」や、圧倒的な保温力を誇る「サーマル・プロ」など、その性能は登山家からも絶大な信頼を得ていたのです。
しかし、2010年代後半から、パタゴニアの製品タグから徐々にポーラテックの名前が消え始めます。かつての定番モデルが次々とアップデートされ、中身が「自社開発の独自素材」へと置き換わっていったのです。この変化は、単なるコスト削減ではなく、パタゴニアという企業が目指す「次のステージ」への布石でした。
なぜパタゴニアはポーラテックの使用を減らしたのか
長年のパートナーシップを解消してまで、パタゴニアが独自路線を突き進む理由は、彼らが掲げる環境理念と製品開発の哲学にあります。
1. リサイクル素材比率の極限までの追求
パタゴニアは現在、製品に使用する全ての素材をリサイクル、または再生可能なものに切り替えるという極めて高い目標を掲げています。ポーラテックもリサイクルポリエステルを取り扱っていますが、パタゴニアは「より純度の高いリサイクル」を求めました。
自社で糸の段階から設計に関与することで、消費者から回収された製品を再びウェアに戻す「循環型」の仕組みをより強固にしようとしたのです。外部サプライヤーの既製品を使うよりも、自分たちでゼロから作る方が、パタゴニアの厳しい環境基準を達成しやすかったというのが大きな理由の一つです。
2. PFAS(フッ素化合物)フリーへの迅速な対応
現在、アウトドア業界で最も大きな課題となっているのが、人体や環境への悪影響が指摘されているPFAS(有機フッ素化合物)の排除です。パタゴニアは業界の先陣を切って「PFASフリー」を宣言しました。
この移行をスピーディーに行うためには、素材メーカーの対応を待つのではなく、自社のサプライチェーンを直接コントロールする必要がありました。独自の撥水加工や素材構造を開発することで、環境負荷を最小限に抑えつつ、山での過酷な使用に耐える機能を維持しようと考えたのです。
3. マイクロプラスチック流出の抑制
フリースの洗濯時に抜け落ちるマイクロプラスチックは、海洋汚染の大きな要因となっています。パタゴニアは、この問題に対しても自社素材で回答を出しました。
例えば、最新の「R1エア」シリーズで見られるジグザグの構造は、保温性を高めるだけでなく、繊維の脱落を抑える工夫も盛り込まれています。こうした「環境への配慮を構造レベルでデザインする」という試みは、既成のポーラテック素材では限界があったのかもしれません。
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R1とR2はどう変わった?進化と変化のポイント
パタゴニアのフリースを代表する「R1」と「R2」の変化について、具体的に見ていきましょう。
伝説の格子状フリース「R1」の今
かつてのR1は、ポーラテック・パワー・グリッドの代名詞でした。現在は、用途に合わせて複数のモデルに細分化されています。
特筆すべきは、独自素材を採用した パタゴニア R1エア です。このモデルは、中空糸(糸の中が空洞になっている糸)をジグザグの織り模様に配置した画期的なフリースです。従来のパワー・グリッド以上に「通気性」と「速乾性」に特化しており、冬の激しいハイクアップでもオーバーヒートしにくいのが特徴です。
一方で、より汎用性の高い パタゴニア R1 デイリー などは、滑らかな表面を持ち、日常使いからレイヤリングまで幅広く対応するよう進化しています。ポーラテック時代のような「ゴツゴツとしたテクニカル感」は薄れましたが、肌触りやストレッチ性は向上しています。
姿を変えた保温の要「R2」
多くのファンが惜しんだのが、毛足の長い「R2ジャケット」のラインナップ変更です。かつてポーラテック・サーマル・プロを使用していたR2は、圧倒的な軽さと温かさで「これがないと山に行けない」と言われるほどの名作でした。
現在、クラシックなR2ジャケットはカタログから姿を消し、代わりに「R2テックフェイス」というモデルが主流になっています。これは、フリースの温かさはそのままに、表面を耐久性の高いソフトシェルのように加工したものです。
「フカフカした中間着」から「風に強いアウター兼用の中間着」へと進化したことで、より厳しい環境下での実用性は高まりましたが、あの独特の柔らかい着心地を愛していたファンにとっては、寂しい変化かもしれません。
結局、自社素材とポーラテックはどちらが良いのか
ここで気になるのが、「結局どちらの性能が上なのか?」という点です。
正直なところ、一概にどちらが優れているとは言えません。ポーラテックは数十年にわたり世界中の軍隊や登山家に採用されてきた、圧倒的な完成度と耐久性を持っています。特に「ポーラテック・パワー・ストレッチ」のフィット感や、「ハイロフト」の保温効率は、今なお業界最高峰です。
対してパタゴニアの独自素材は、特定の機能に鋭く特化しています。「蒸れにくさ」に関しては、最新の パタゴニア R1エア が往年のポーラテック製R1を上回っていると感じるユーザーも多いでしょう。
また、パタゴニアの自社素材は「軽さ」と「収納性」においても進化が見られます。環境負荷を減らしつつ、最新の登山スタイル(より速く、より軽く)に最適化されているのが、現在のパタゴニア製品の強みです。
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ポーラテック製品はもう手に入らないのか
「それでもやっぱりポーラテックがいい!」という方も安心してください。パタゴニアが全てのポーラテック製品をやめたわけではありません。
現在でも、一部のテクニカルなアクセサリー類(バラクラバやグローブなど)や、特定のハイエンドモデルではポーラテック素材が継続して採用されています。パタゴニアは素材の良し悪しを判断する際、自社素材がポーラテックの性能に追いつかないと判断した分野については、依然としてパートナーシップを維持しています。
また、パタゴニア以外のアウトドアブランドに目を向ければ、今でもポーラテックを主役に据えているメーカーはたくさんあります。
- アークテリクス フリース:緻密な裁断とポーラテック素材を組み合わせた高い完成度が魅力。
- ミレー フリース:アルパインシーンで頼りになる堅牢なポーラテック製品が豊富。
- モンチュラ フリース:身体の動きに追従するポーラテックのストレッチ性能を最大限に活かしたデザイン。
このように、パタゴニアが自社素材に舵を切ったことで、市場には「パタゴニアの先進的な独自素材」と「他ブランドが守り抜くポーラテックの信頼性」という、面白い選択肢が生まれています。
道具選びの視点を「素材ブランド」から「使用シーン」へ
パタゴニアがポーラテックの使用を減らした事実は、私たちユーザーに「道具選びの基準」を問い直させています。
かつては「ポーラテックのロゴさえあれば安心」という時代もありました。しかし、現在は素材の進化が加速し、パタゴニアのように「環境性能」と「特定の運動量への最適化」を両立させるために独自素材を開発するメーカーが増えています。
これからのウェア選びで大切なのは、素材のブランド名だけで判断するのではなく、「そのウェアで何をしたいか」という具体的なシーンを想像することです。
- 激しく動き、汗を大量にかく場面: パタゴニア R1エア のような、抜けの良さを追求した独自素材がベスト。
- とにかく温かく、実績のある安心感が欲しい場面: ポーラテック・ハイロフトを採用した他社製品や、パタゴニアのクラシックな パタゴニア シンチラ を検討する。
- 岩場や藪漕ぎなど、耐久性が求められる場面: 表面をコーティングした「テックフェイス」シリーズのような新しいアプローチの製品を選ぶ。
パタゴニアの選択は、単なるビジネス上の契約変更ではなく、より持続可能で、より専門的なギアへと進化するための大きな一歩だったと言えるでしょう。
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まとめ:パタゴニアがポーラテックをやめた理由は?R1・R2の変更点と後継素材を徹底解説
パタゴニアが多くの製品でポーラテックの使用をやめた理由は、環境保護への強いコミットメントと、特定の運動量に最適化した次世代の機能性を追求するためでした。
R1は「R1エア」としてより通気性に優れた形へ進化し、R2は「テックフェイス」として耐候性を高めた形へと姿を変えました。かつてのポーラテック製モデルにあった「汎用性の高い快適さ」は、今や「特定の目的に特化した鋭い性能」へと昇華されています。
もし、あなたが今、新しいフリースを探しているのなら、ぜひ袖を通してみてください。ポーラテックのロゴがなくても、そこにはパタゴニアが数十年の経験を経て辿り着いた、新しい時代の機能美が詰まっています。
旧来のファンにとっては少し寂しい変化かもしれませんが、パタゴニアの新しい挑戦は、私たちのアウトドア体験をより軽やかで、より地球に優しいものに変えてくれるはずです。自分自身の登山スタイルやアクティビティに合わせて、進化した パタゴニア フリース の中から、最高の相棒を見つけてみてください。


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