せっかく手に入れたお気に入りの革製登山靴。「一生モノ」として長く愛用したいけれど、どうやって手入れをすればいいのか分からず、泥だらけのまま玄関に放置していませんか?
革の登山靴は、適切なメンテナンスさえすれば10年、20年と履き続けることができる素晴らしい道具です。逆に、手入れを怠ると乾燥してひび割れたり、ソールが剥がれたりして、本来の寿命を全うできずにダメになってしまいます。
今回は、初心者の方でも失敗しない、革製登山靴の正しい手入れ方法をステップバイステップで詳しく解説します。大切な相棒を最高のコンディションに保つための秘訣を見ていきましょう。
なぜ革製登山靴の手入れが必要なのか?
登山靴、特にレザーブーツは過酷な環境で使用されます。岩場での擦れ、泥水、そして足からの汗。これらはすべて革にとってストレスとなります。
革の「油分」と「水分」のバランス
革は動物の皮膚です。人間の肌と同じように、水分や油分がなくなるとカサカサになり、柔軟性を失います。柔軟性がなくなった革は、歩行時の屈曲に耐えられず、パキッと割れてしまいます。これが「クラック(ひび割れ)」です。一度割れた革は元には戻りません。
防水性能の維持
多くの登山靴にはゴアテックスなどの防水透湿素材が使われていますが、外側の革が保水してしまうと、透湿性が損なわれ、靴の中が蒸れて不快になります。表面の撥水性を維持することは、快適な登山に直結するのです。
登山から帰ったらすぐやるべき!基本のメンテナンス手順
山行から帰宅した直後、疲れていてもこれだけはやっておきたい基本の手順を解説します。
1. 付属品を外して状態をチェックする
まずは靴紐をすべて解き、インソール(中敷き)を取り出します。
靴紐を外すことで、ハトメの隙間に入り込んだ砂利や泥をしっかり落とせるようになります。また、インソールを抜くのは、靴内部の湿気を逃がすためです。
2. 泥汚れをブラッシングで落とす
乾燥した泥は、専用のブラシを使って払い落とします。
ここで役立つのが馬毛ブラシや豚毛ブラシです。コシのある豚毛で大きな泥を落とし、細かな部分は使い古した歯ブラシなどを活用すると隅々まで綺麗になります。
3. 水拭き、または水洗い
ブラッシングだけで落ちない汚れは、濡らして固く絞った布で拭き取ります。
もし泥汚れがひどい場合は、思い切って水洗いしましょう。ただし、ジャブジャブと水に浸けるのではなく、表面を濡らしながらコロニル クリーニングフォームなどの専用クリーナーを使って汚れを浮かせるのがコツです。
4. じっくりと「陰干し」する
ここが最も重要なポイントです。
直射日光や、ストーブの近くでの乾燥は絶対に避けてください。急激な温度変化は革を硬化させ、ソールと本体を接着している糊を劣化させて剥離(加水分解)を早めます。
風通しの良い日陰で、数日間かけてじっくり乾かしましょう。中に新聞紙を詰めると乾燥が早まりますが、湿ったらこまめに交換するのが鉄則です。
素材別・革を蘇らせる「保革」のテクニック
靴が完全に乾いたら、次は栄養補給です。革の種類によって使う道具が異なります。
スムースレザー(表革)の場合
ツルツルとした表面の革には、クリームやワックスを塗り込みます。
指先にコロニル アクティブレザーワックスを少量取り、体温で溶かしながら円を描くように塗り広げていきます。塗り終わったら、乾いた布や馬毛ブラシでブラッシングすると、深みのある光沢が出てきます。
ヌバック・スエード(起毛革)の場合
起毛の質感を大切にしたい場合は、液状の保革剤を使います。
コロニル ヌバック+テキスタイル ボトルのようなタイプなら、毛の間に栄養を浸透させつつ、質感を損ないません。仕上げにスエード用の真鍮ブラシで毛並みを整えれば完璧です。
ヌバックをあえてワックス加工する場合
最近のトレンドとして、ヌバックレザーにあえてワックスを塗り込み、起毛を寝かせてツヤを出す「ワックス加工」があります。
これを行うと、圧倒的な防水性と防汚性が手に入ります。ただし、見た目が大きく変わるため、自分の好みに合わせて選びましょう。
長持ちさせるために揃えたいおすすめの道具
手入れを楽しく、そして効果的にするために、定評のあるアイテムを揃えておきましょう。
- 汚れ落としの定番砂埃や泥を効率よく落とすにはタピール シュムッツブラシが便利です。しっかりとした毛足が隙間の汚れを掻き出してくれます。
- 防水の要仕上げには必ず防水スプレーを。コロニル カーボンプロは、最新のカーボンテクノロジーで強力な撥水膜を作ります。これをかけるだけで、次回の山行後の掃除が格段に楽になります。
- 革の栄養剤古い油分をリセットしたい時はエム・モゥブレィ ステインリムーバーが役立ちます。蓄積したワックスを一度落とすことで、新しい栄養が浸透しやすくなります。
やってはいけない!登山靴をダメにするNG習慣
良かれと思ってやっていることが、実は寿命を縮めているかもしれません。
ミンクオイルの常用はNG
一般的な革靴によく使われるミンクオイルですが、登山靴には不向きな場合が多いです。ミンクオイルは革を非常に柔らかくする効果があるため、足を支えるために必要な登山靴の「剛性」を損なう恐れがあります。登山靴専用のワックスを選びましょう。
保管場所の問題
「購入時の箱」に入れてクローゼットの奥にしまい込んでいませんか?
これは加水分解を引き起こす一番の原因です。箱の中は湿気がこもりやすく、ソールのポリウレタン素材が空気中の水分と反応してボロボロになってしまいます。保管は風通しの良い、なるべく高い場所が理想です。
長期間履かないこと
実は、たまに履いて歩くことが一番のメンテナンスになります。歩くことでソールに適度な刺激が加わり、内部のガスが抜けて劣化を防げます。シーズンオフでも、近所の散歩などで足を通してあげてください。
ソールの張り替え(リソール)のタイミング
どんなに丁寧に手入れをしていても、ソールは摩耗します。
目安として、購入から4〜5年が経過しているか、ソールの溝がなくなってきたら張り替えを検討しましょう。
革がしっかり手入れされていれば、中身をそのままに靴底だけを新品に交換できます。これを繰り返すことで、自分の足に完全に馴染んだ「世界に一足だけの靴」が出来上がるのです。
もしソールの端が少し浮いてきたと感じたら、応急処置としてセメダイン シューズドクターNを使用するのも手ですが、安全に関わる登山靴の場合は、早めに登山靴専門店やメーカーへ修理に出すことを強くおすすめします。
革製登山靴の手入れ完全ガイド!長持ちさせるメンテナンス方法とおすすめ道具を解説:まとめ
革製登山靴の手入れは、最初は面倒に感じるかもしれません。しかし、山から帰った後に靴と向き合う時間は、その山行を振り返る豊かな時間でもあります。
泥を落とし、革に栄養を与え、磨き上げる。
その工程を繰り返すたびに、靴には独特の風合い(エイジング)が刻まれ、あなたの足の形にフィットしていきます。
今回ご紹介したコロニルシリーズなどの道具を活用して、ぜひ次の登山の前には相棒をピカピカにしてあげてください。しっかり手入れされた靴は、きっとあなたをより遠く、より高い場所へ安全に連れて行ってくれるはずです。
正しい知識を身につけて、一生モノの登山靴と共に素晴らしいアウトドアライフを楽しみましょう!

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