パタゴニアの熱狂的なファンだけでなく、登山やキャンプを楽しむ人なら一度は袖を通したことがある、あるいは憧れたことがある名作中の名作。それが「R2ジャケット」です。
しかし、ある時を境に公式サイトのラインナップからその姿を消しました。「そろそろ買い替えようかな」とショップを訪れた人が「え、ないの?」と絶句するシーンも珍しくありません。
この記事では、パタゴニアの象徴でもあったパタゴニア R2ジャケットがなぜ廃盤という道を選んだのか、その裏側にある技術革新やブランドの哲学を深掘りします。さらに、今から手に入る後継モデルや、R2の代わりとして納得できる優秀なフリースについても詳しくご紹介していきましょう。
パタゴニアR2が愛された理由と「唯一無二」の性能
まず、なぜこれほどまでに多くの人がR2の廃盤を惜しんでいるのか。その理由は、このジャケットが持つ「魔法のような着心地」にあります。
R2は、ポーラテック社の「サーマル・プロ」という素材を採用していました。毛足の長いフリース素材で、見た目はモコモコとしていて非常に温かそう。実際に着てみると、驚くほど軽くて温かいのです。しかし、R2の真骨頂は「温かさ」そのものではなく、その「抜けの良さ」にありました。
激しく動いて体温が上がると、長い毛足の間を風が通り抜け、余分な熱気を一気に放出してくれる。一方で、上にウィンドシェルやハードシェルを羽織れば、毛足がデッドエアをがっちり掴んで、驚異的な保温力を発揮する。この「動けば涼しく、止まれば温かい」という相反する機能を高次元で両立していたのが、R2という存在だったのです。
パタゴニアR2はなぜ廃盤?考えられる4つの決定的な理由
パタゴニアがこれほどの名作を廃盤にしたのには、単なる売上の問題ではない、いくつかの複合的な要因が絡んでいます。
1. レイヤリング(重ね着)の進化とトレンドの変化
かつてのアウトドア界では「フリースは保温、シェルは防風」という役割分担が明確でした。しかし近年、パタゴニア ナノエアに代表される「アクティブインサレーション(通気する中綿)」が登場したことで、フリースの立ち位置が大きく変わりました。
中綿なのに通気性が高く、適度な防風性も備えた新素材は、R2が得意としていた「激しく動くシーンでの中間着」という役割をより高いレベルでこなせるようになったのです。R2は「風を通しすぎる」という弱点があり、常にシェルとの併用が前提でしたが、現代のレイヤリング理論では「1枚でより広い状況に対応できること」が求められるようになりました。
2. 製品ラインナップの専門分化
パタゴニアは現在、R2が持っていた機能を複数のモデルに分散・特化させる戦略をとっています。
例えば、表面に耐風性を持たせたR2テックフェイス・フーディや、軽量で汗抜けに特化したR1エアなどです。これら「進化した後継者たち」が育ったことで、汎用性は高いものの尖った特徴が薄くなってしまったオリジナルのR2は、その役目を終えたと判断されたと考えられます。
3. 環境負荷への配慮(マイクロプラスチック問題)
パタゴニアは世界で最も環境保護に厳しいブランドの一つです。実は、R2のような「毛足の長いフリース」は、洗濯時に微細なプラスチック繊維(マイクロプラスチック)が抜け落ち、海洋汚染の原因になりやすいという課題を抱えています。
近年のパタゴニア製品は、表面を滑らかにしたり、特殊な織り組織にしたりすることで、繊維の脱落を抑える工夫がなされています。R2の廃盤は、より環境負荷の少ない素材への完全移行というブランドの意思表示でもあったのです。
4. サプライチェーンと生産効率の最適化
パンデミック以降、世界的な物流の混乱や生産コストの上昇が続きました。これを受けて多くのブランドが、製品ラインナップを「本当に必要なもの」に絞り込む作業を行いました。R2は非常に高機能でファンも多かったのですが、製造工程が複雑なポーラテック・サーマル・プロを使用していたこともあり、整理の対象になった可能性は否定できません。
R2の後継モデルはどれ?それぞれの特徴と選び方
R2が廃盤になった今、私たちは何を選べばいいのでしょうか。パタゴニアの現行ラインナップから、R2のスピリットを受け継ぐモデルをピックアップします。
R2テックフェイス・ジャケット:風に強い現代のR2
現在、名前に「R2」を残している唯一のモデルがパタゴニア R2テックフェイスです。
旧R2との最大の違いは、表面の質感です。モコモコした質感はなく、さらりとしたジャージのような風合い。裏面はしっかり起毛しており保温性は高いですが、特筆すべきは「耐風性」と「耐久性」です。
旧R2は風が吹くとスカスカでしたが、テックフェイスは適度に風を防ぎます。そのため、アウターとしても使いやすく、岩場などで擦れても生地が傷みにくいのが特徴です。ただ、通気性の「抜けの良さ」を最優先するなら、少しイメージが違うと感じるかもしれません。
R1エア・クルー / フーディ:抜けの良さを追求した新世代
R2の「驚異的な通気性」に惚れ込んでいた人なら、パタゴニア R1エアが最も納得できる選択肢になります。
独自のジグザグ構造の生地が、汗を素早く吸い上げ、外へと逃がします。保温力こそR2より一段階落ちますが、アクティブに動く登山やトレイルランニングでは、これ以上ないほど快適な「行動着」として機能します。
リツール・ジャケット:クラシックな質感の復活
2023年頃から展開されているパタゴニア リツール・ジャケットは、かつてのR2に近い、長い毛足を持つフリースです。
テクニカルな登山用というよりは、ライフスタイル(日常着)寄りの設定になっていますが、あの「フワフワ感」を求めているユーザーにとっては、現在のラインナップで最も近い選択肢と言えるでしょう。
他社製品で「R2の代わり」を探すなら
パタゴニアにこだわらなければ、かつてのR2とほぼ同じ素材、あるいは同じコンセプトで作られている名品がいくつか存在します。
マウンテンハードウェア:ハイロフトジャケット
R2愛好家の間で「実質的なR2」と呼ばれているのが、マウンテンハードウェア ハイロフトジャケットです。
かつてのR2と同じポーラテック社のハイロフト素材を使用しており、あのモコモコした質感と、圧倒的な保温・通気のバランスをそのまま体感できます。シルエットもテクニカルで、山での使用に完璧に応えてくれます。
ミレー:フュージョンライン
フランスの老舗ブランド、ミレーが展開するミレー フリースの中にも、ハイロフトな素材を使用したモデルがあります。裁断が非常に立体的なので、運動性を重視するならこちらも有力な候補です。
R2復活の噂はあるのか?
多くのユーザーが待ち望んでいる「R2の完全復活」。現時点では、パタゴニア公式からそのような発表はありません。
しかし、パタゴニアは過去の名作を「アーカイブ」として現代の技術でアップデートして復刻させることがあります。ただし、前述したマイクロプラスチックの問題があるため、もし復活するとしても、旧R2と全く同じ素材ではなく、繊維が抜けにくい新素材を使った「新生R2」になる可能性が高いでしょう。
今は、中古市場(メルカリや古着店)で状態の良い旧モデルを探すか、現行のテックフェイスや他社のハイロフトモデルで納得のいく1着を見つけるのが現実的です。
パタゴニアR2はなぜ廃盤?理由と後継モデル、復活の噂や代わりのフリースを解説:まとめ
パタゴニアのR2が廃盤になった背景には、アクティブインサレーションの台頭や、環境保護への強い信念、そしてレイヤリングの進化という時代の流れがありました。
「あの1着さえあれば、どこへでも行ける」と思わせてくれたR2がなくなったことは寂しいですが、その後を継ぐR2テックフェイスやR1エアは、現代のアウトドアシーンにより最適化された素晴らしい製品です。
もしあなたが「あの温かさと通気性」を求めているなら、以下のステップで次の相棒を選んでみてください。
- 風に強く、アウターとしても使いたいなら: R2テックフェイス
- 汗抜けを重視し、激しく動くなら: R1エア
- あのモコモコした質感と保温性が恋しいなら: マウンテンハードウェアのハイロフトジャケット、またはリツール・ジャケット
伝説のフリースR2が教えてくれた「快適なレイヤリング」の知識を活かして、あなたにとっての新しい「最高の1着」を見つけてくださいね。
パタゴニアR2はなぜ廃盤?という疑問が晴れた今、次なる相棒と共にフィールドへ出かけましょう。

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