パタゴニアの長い歴史の中で、わずかな期間だけ光を放ち、そして消えていった「伝説のモデル」があるのをご存知でしょうか?
古着好きやパタゴニア愛好家の間で、今なお探し求めている人が絶えない名作。それがパタゴニア キメラです。
2000年代初頭の空気感を纏ったこのフリースは、現行品にはない独特の素材感と、無骨ながらも洗練されたシルエットが魅力です。今回は、そんなパタゴニアのキメラについて、特徴からサイズ感、気になる中古相場まで徹底的に掘り下げていきます。
パタゴニアのキメラが「幻」と呼ばれる理由
パタゴニアのフリースといえば、誰もが思い浮かべるのは「レトロX」や「スナップT」でしょう。これらは数十年にわたって愛され続けている定番中の定番です。
しかし、パタゴニア キメラは違います。
このモデルが登場したのは、2001年から2002年にかけてのわずか2年足らず。当時のパタゴニアは、ブランドの代名詞である「シンチラ」素材を進化させようと、さまざまな実験的なデザインを世に送り出していました。キメラはその試行錯誤の中で生まれた、いわば「時代の徒花」のような存在なのです。
販売期間が極端に短かったため、市場に出回っている数が圧倒的に少なく、古着屋で見かけることすら稀。その希少性こそが、多くのコレクターを惹きつけてやまない理由の一つになっています。
独特な「シンチラ・グリッド」素材の魅力
キメラを語る上で欠かせないのが、その特殊な素材感です。
通常のシンチラフリースは、表面が均一で滑らかな質感を持っていますが、パタゴニア キメラには「シンチラ・グリッド」と呼ばれる、凹凸のある素材が採用されています。
- 立体的なテクスチャ: 表面に細かな格子状の模様や、斑点のようなモトル模様が浮かび上がっています。これが「キメラ(合成獣)」という名前の由来を感じさせる、複雑で有機的な表情を作り出しているのです。
- 機能的なメリット: この凹凸は単なるデザインではありません。グリッド構造にすることで、繊維の間に暖かい空気を溜め込む「デッドエア」の効果を高めつつ、運動時に発生する余分な熱や蒸れを効率よく逃がす仕組みになっています。
- 驚きの軽さ: 見た目はしっかりとボリュームがあるように見えますが、実際に手に取ると驚くほど軽量です。重たいアウターを羽織りたくない日の街着としても、アクティブなシーンのミッドレイヤーとしても、非常に優秀なパフォーマンスを発揮します。
ラインナップ:ジャケットとプルオーバーの違い
キメラには大きく分けて2つの形が存在します。それぞれの特徴を見ていきましょう。
フルジップ・ジャケットタイプ
フロントがジッパーで全開になるタイプです。体温調節がしやすく、肌寒い時期の羽織りものとして重宝します。首元までしっかりジッパーが上がるため、防風性も確保されています。袖口や裾にはパイピングが施されており、パタゴニアらしいクラシックなアウトドアスタイルを楽しめます。
ハーフジップ・プルオーバータイプ
胸元までジッパーがあるアノラック形式のモデルです。こちらはよりスポーティーで、レイヤリング(重ね着)のしやすさが際立ちます。インナーにシャツを合わせて襟を覗かせたり、上からシェルを羽織ったりと、ファッションとしての着こなしの幅が広いのが特徴です。
どちらのタイプも、胸元にはお馴染みのフィッツロイ・ロゴが鎮座しており、パタゴニアファンにはたまらない所有欲を満たしてくれます。
気になるサイズ感とシルエットの傾向
ヴィンテージのパタゴニアを購入する際、一番の悩みどころはサイズ選びですよね。
パタゴニア キメラは、2000年代初頭のUSサイズ基準で作られています。そのため、現代のタイトな服に慣れている方からすると、かなりゆったりとした作りに感じるはずです。
- 全体的なシルエット: 身幅が広く、肩が少し落ちるようなドロップショルダー気味の「ボックスシルエット」です。今っぽくオーバーサイズで着こなすには最高の形と言えるでしょう。
- 着丈のバランス: 身幅が広い分、着丈はそこまで長くありません。そのため、サイズを上げても「丈が長すぎてだらしない」という印象になりにくいのが嬉しいポイントです。
- 選ぶ際の目安: 基本的には「普段着ている日本サイズよりもワンサイズ下」を選ぶのがジャストフィットへの近道です。例えば、普段Lサイズを着ている方ならMサイズ、Mサイズの方ならSサイズが目安となります。
ただし、古着の場合は前オーナーの洗濯状況によって多少の縮みが出ている可能性もあります。購入前には必ず身幅や着丈の実寸を確認することをおすすめします。
カラーバリエーションと人気の色
キメラの魅力はそのカラーリングにもあります。2000年代のパタゴニアは、現在よりも少し発色が強く、それでいて絶妙に渋い中間色を多く採用していました。
- テキーラゴールド: 当時のパタゴニアを象徴する、マスタードに近いイエロー系。キメラのグリッド素材と相まって、非常にヴィンテージらしい雰囲気が出ます。
- バーガンディ・エンジ系: 落ち着いた赤系は、大人のアメカジスタイルにぴったりです。
- ブラック・ネイビー: 定番の色味ですが、素材の凹凸があるおかげで、のっぺりせず高級感があります。
どの色を選んでも、現行のポリエステル素材とは一線を画す「深み」があるのがキメラの凄みです。
中古相場と入手時のチェックポイント
「幻」と言われるだけあって、パタゴニア キメラを中古市場で見つけるのは容易ではありません。しかし、根気よく探せばメルカリやヤフオク、老舗の古着屋などで出会えるチャンスはあります。
現在の相場感
状態やサイズ、カラーにもよりますが、おおよそ 15,000円から30,000円前後 が相場となっています。希少価値が高まっているため、デッドストック(未使用品)に近い状態であれば、さらに高値がつくことも珍しくありません。
購入時に確認すべき3つのポイント
- フリースの「潰れ」をチェック:長年愛用されたフリースは、肘や腰、リュックを背負う肩の部分が摩擦で固まり、テカっていることがあります。画像で毛並みが立っているかを確認しましょう。
- パイピングの伸び具合:袖口や裾の縁取り(パイピング)はポリウレタンが含まれているため、経年劣化で伸びきってしまうことがあります。ここがビシッとしているものは、大切に扱われていた証拠です。
- ジッパーの蝶棒:フルジップの場合、ジッパーの差し込み口(蝶棒)が裂け始めている個体があります。ここが壊れると修理に費用がかかるため、事前のチェックが必須です。
今、あえてキメラを着るということ
現代は、高性能なテックウェアが溢れています。最新のパタゴニア R1などは、数値上のスペックではキメラを上回るかもしれません。
しかし、服を着る楽しみはスペックだけではありません。パタゴニア キメラが持つ独特の表情、歴史の裏側に埋もれたストーリー、そして一期一会の出会い。それらは、最新のショップに行けば手に入る利便性とは対極にある「豊かさ」を教えてくれます。
人と被りたくない、自分だけのスタンダードを持ちたい。そんな願いを持つ方にこそ、このキメラは最高の相棒になってくれるはずです。
パタゴニアのキメラとは?伝説のフリースを徹底解説!サイズ感や中古相場も紹介
さて、ここまでパタゴニア キメラの魅力について語ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
20年以上前の製品でありながら、古さを感じさせないどころか、かえって新鮮に映るデザインと素材感。パタゴニアが歩んできた革新の歴史を、その肌で直接感じることができる稀有なアイテムです。
もしあなたが古着屋のラックで、あるいはネットの海で、あの独特なグリッド模様のフリースを見かけたら、迷わず手に取ってみてください。それは、二度と手に入らないかもしれない「伝説」との出会いかもしれません。
自分にぴったりの一着を見つけて、パタゴニアの奥深い世界をさらに楽しんでいきましょう。

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