「ノースフェイスの服を買いに行ったら、タグにアメリカの会社じゃなくて日本の会社名が書いてあった」「海外で買ったノースフェイス、なんだかサイズ感が全然違う気がする……」
そんな違和感を持ったことはありませんか?実は、世界中で愛されているアウトドアブランドTHE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)には、ファンなら知っておきたい「二つの顔」があるんです。
今回は、ノースフェイスの親会社にまつわる複雑な大人の事情や、日本と海外でなぜこれほどまでに商品ラインナップが違うのか、その裏側をプロの視点で分かりやすく紐解いていきます。
世界を牛耳るノースフェイスの親会社「VFコーポレーション」
まずはグローバルな視点から見ていきましょう。世界市場においてTHE NORTH FACEの親会社となっているのは、アメリカに本拠を置く巨大アパレル企業「VFコーポレーション(VFC)」です。
一般的にはあまり聞き馴染みがない名前かもしれませんが、実は世界最大級のアパレル・フットウェア企業の一つ。彼らが買収して成長させたブランドのリストを見れば、その凄まじい影響力がわかるはずです。
例えば、ストリートシーンに欠かせないVans(ヴァンズ)や、タフなブーツでおなじみのTimberland(ティンバーランド)、ワークウェアの象徴であるDickies(ディッキーズ)。これらはすべてVFコーポレーションが統括している「兄弟ブランド」なんです。
かつて経営難に陥っていたノースフェイスを2000年に買収し、強力な物流網とマーケティング戦略で世界一のアウトドアブランドに育て上げたのが、この親会社VFCです。世界中のほとんどの国で見かけるノースフェイスは、このVFCの直轄体制によって運営されています。
日本のノースフェイスは別会社?「ゴールドウイン」の特別な立ち位置
さて、ここからが少し複雑で、かつ面白いポイントです。実は、日本と韓国においてTHE NORTH FACEのブランド権を持っているのは、親会社のVFCではなく、日本のスポーツメーカー「株式会社ゴールドウイン」なんです。
通常、海外ブランドが日本に進出する場合、本国の「日本支社」が運営するか、名前を借りるだけの「ライセンス契約」を結ぶのが一般的です。しかし、ゴールドウインの場合は一味違います。彼らは1994年に、日本と韓国における「ザ・ノース・フェイス」の商標権そのものを買い取ってしまいました。
つまり、日本のノースフェイスはアメリカの言いなりになっているわけではなく、独自の判断で商品を作り、独自の店舗運営ができる独立した権利を持っているということ。これが、日本のノースフェイスが「本国アメリカよりもおしゃれで質が高い」と世界中から評価される最大の理由なんです。
日本企画が世界を魅了する!パープルレーベルの衝撃
日本独自の権利を持っているからこそ生まれたのが、ファッション業界で伝説となっている「日本企画」の商品たちです。
代表格は、代官山のショップ「ナナミカ」とコラボレーションして展開しているTHE NORTH FACE PURPLE LABEL(パープルレーベル)。これは完全に日本オリジナルのラインで、本来のアウトドアスペックに現代的なファッション性を融合させた、いわば「街で着るための最強にクールなノースフェイス」です。
ロゴの色が紫色になっているのが特徴ですが、このラインは海外のファッション関係者がわざわざ日本に買い付けに来るほど人気があります。アメリカの親会社が作る無骨でガチなアウトドアウェアも魅力的ですが、日本人の体型に合い、かつ都会的な洗練さを併せ持つ日本企画は、世界でも唯一無二の存在感を放っています。
海外モデル(US企画)との具体的な違いとは
では、私たちが普段手に取るTHE NORTH FACEと、並行輸入などで入ってくる海外モデルにはどんな違いがあるのでしょうか。大きく分けて3つのポイントがあります。
一つ目は「サイズ感」です。アメリカのVFCが展開するUSモデルは、とにかくデカい。ガタイの良い欧米人が分厚い中間着を着込むことを想定しているため、日本人がいつものサイズで選ぶと、袖が余りすぎてしまうことがよくあります。一方、ゴールドウインの日本企画は、日本人の体型に合わせてパターンが細かく調整されています。
二つ目は「機能の持たせ方」です。USモデルは、広大な国立公園や雪山での活動を前提とした「スペック重視」の作りが多いのに対し、日本企画は通勤・通学などの日常使いを考慮した「快適性とスタイリッシュさ」のバランスが絶妙です。
三つ目は「価格帯」です。日本企画は高品質な素材や細やかな縫製にこだわっているため、海外で安価に流通しているモデルに比べると少し高価になる傾向がありますが、その分、長く愛用できる耐久性を備えています。
ゴールドウインが描くこれからの戦略
日本のノースフェイスをここまで大きくしたゴールドウインですが、最近では「ノースフェイス頼み」から一歩踏み出した新しい挑戦を始めています。
それが、自社名を冠したブランドGoldwin(ゴールドウイン)のグローバル展開です。ノースフェイスの運営で培った高度な技術力とデザインセンスを武器に、今度は日本から世界へ打って出ようとしています。
親会社であるVFCとの関係も、単なる権利の貸し借りではなく、お互いの強みを認め合うパートナーシップへと進化しています。最先端の技術を共有しながらも、それぞれの市場に最適な商品を提供し続ける。この健全な関係性こそが、私たちが常に魅力的な新作を手にできる理由なのです。
結論:ノースフェイス 親会社の正体を知って賢く選ぼう
ここまで解説してきた通り、「ノースフェイス 親会社」というキーワードの裏には、世界を統括するアメリカのVFコーポレーションと、日本独自の文化を形作るゴールドウインという、二つの巨大な存在がありました。
結局のところ、どちらが「本物」かという議論は無意味です。アメリカのタフで力強いマインドを受け継ぎつつ、日本の職人気質なモノづくりが融合しているからこそ、今のノースフェイスの人気があるからです。
あなたがもし、本格的な雪山登山を目指すなら海外モデルのTHE NORTH FACEをチェックしてみるのも面白いでしょう。でも、日本の街角で、最高に自分を格好良く見せてくれる一着を探しているなら、ゴールドウインが情熱を込めて作った国内正規品を選ぶのが間違いありません。
次にショップへ行った際は、ぜひタグやタグの裏側を覗いてみてください。そこには、世界を股にかけた巨大なブランドヒストリーが隠されています。背景を知ることで、お気に入りの一着への愛着もより深まるはずですよ。

コメント